生成AIを使うようになって、以前なら難しいと思っていたことにも、少しずつ取り組めるようになりました。
仕事の効率化ももちろん便利です。調べものをしたり、情報を整理したり、英語のメールへの返信文を作ってもらったり。AIに助けられている場面はたくさんあります。
でも、私がAIに感じている魅力は、それだけではありません。
これまでの経験や知識だけでは手が届かなかったことに、AIの力を借りて取り組めるようになる。自分にできることの範囲が広がっていくことに、大きな可能性を感じています。
一方で、AIに何でも任せて、私はその結果を確認するだけになることには、あまり魅力を感じません。
効率化はしたいけれど、考えることや、何かを作る楽しさは残しておきたい。
最近、AIを使いながら、そんなことを考えています。
今まで手が届かなかったことに、取り組めるようになった
私はWeb制作に関わる仕事をしてきました。
Webサイトやアプリを作るとき、何が必要なのか、どういうものにしたいのかを考えることはできます。しかし、それらを実際に形にするには、別の知識や技術が必要です。
以前、iOSアプリを作りたくて、JavaScriptでアプリを開発できるTitaniumや、Swiftに手を出したことがあります。でも、一つのアプリを完成させるところまでは、たどり着けませんでした。
新しい言語でなくても、思ったとおりに動かすには、何度も試行を繰り返す必要があります。
それが、生成AIを使うようになって、作りたいものを形にするまでの距離が縮まったと感じています。AIにコードを書いてもらっても、数回やり直すことはあります。それでも、AIを使わずに一人でコードを書くより、ずっとハードルが低くなりました。
以前にも記事にしたように、仕事の中で「あれば便利なのに」と思っていたものを、AIに相談しながら形にしたことがあります。QRコードを生成するツールやChrome拡張などです。
詳しい経緯は、「あればいいのに」を、AIに相談してツールにしてみたという記事で紹介しています。
必要な機能を考え、AIに実装を手伝ってもらい、試しながら修正していく。プログラミング言語を自在に扱えるようになったわけではありませんが、実際に形にするところまで進められました。
QRコード生成ツールのように、現在も仕事で使っているものがあります。一方で、Chrome拡張のように、作れたとしても配布や運用、セキュリティの問題が残ることもあります。
それでも、自分にできることの範囲が広がったのは確かです。
情報整理についても、似たようなことを感じています。
DNWの記事制作や生成AIに関する情報の整理でも、AIに調査や構成づくりを手伝ってもらっています。
扱う情報が多くても、最初からすべてを一人で整理する必要がなくなり、何を伝えたいのか、どこをもっと調べたいのかという部分に取り組みやすくなりました。
知識や技術をすべて身につけてから始めるのではなく、必要なところをAIに補ってもらいながら進められる。そこに価値を感じています。
効率化はしたい。でも、考えたり作ったりする楽しさも残したい
最近、AIを使った働き方を紹介するYouTube動画をいくつか見ました。
AIに仕事を任せたり、複数の作業を一つの環境で進めたりする取り組みです。AIに任せられることが増えれば、これまで人が行っていた作業を減らせる可能性があります。
私も、そうした効率化には魅力を感じています。
ただ、効率化だけを突き詰めて、AIが次々と仕事を進め、人はその結果を確認して、また次のタスクを処理する。そんなことだけを繰り返す働き方になるのだとしたら、あまり魅力を感じません。
もちろん、単純な作業を減らすことには意味がありますし、時間をかけずに済ませたい仕事もあります。
でも、私にとっては、何を作ろうかと考えたり、試してみて、うまくいかなければ別の方法を考えたりすることも大切です。
AIが作業を代わってくれることで、そうした部分にもっと時間を使えるのであれば、積極的に活用したいと思います。
どこまでAIに任せるのかという問題は、効率だけでは決められません。
何を考え、何を作りたいのか。そして、どこに時間を使いたいのか。
そのことも含めて、AIとの付き合い方を考えていきたいと思っています。
これまでの経験が、AIを使うときにも役立っている
AIにプログラムを書いてもらえるからといって、何を作るかまで全部任せたいわけではありません。
私の場合、Web制作やプログラミングの経験があることで、どんな機能が必要なのか、どこを確認する必要があるのか、何が問題になりそうなのかを見つけやすいと感じています。
例えば、QRコード生成ツールを作ろうと思ったのは、公開前のURLを外部のサービスに入力することに抵抗があったからです。手元で生成できればいいと考えたのも、これまでWeb制作に関わってきた経験があったからだと思います。
Chrome拡張でも、似たことがありました。ページ数の多いサイトでは、処理が途中で止まってしまうことがありました。そこで、サイトの構成をディレクトリ単位で区切れば、一度に扱うページ数を減らせると考えました。ディレクトリごとに処理すれば、最後まで進められるのではないかと思ったのです。
これも、これまでの経験から出てきた発想だったのかもしれません。
一方、実装のために必要なコードを書くことや、知らない技術を調べることは、AIに助けてもらえる部分です。
これまでの経験だけですべてできるわけではなく、AIだけに任せれば十分というわけでもない。両方が組み合わさることで、以前よりできることが増えているのだと思います。
経験がないところからでも、可能性を広げられるのではないか
安宅和人氏の「AI native時代の袋小路」という論考も、考えるきっかけになりました。
この論考では、仕事の判断力は、実際に手を動かし、失敗や試行錯誤を重ねる中で育ってきたものであり、AIがその途中の作業を担うようになると、これからの世代はその経験を積む機会自体を失いかねない、という問題が提起されています。
確かに、私がAIに任せる部分を判断しやすいのは、これまでの経験があるからだと思います。
AIを使う前から、プログラミングに関する知識はありました。新しい言語で一つのアプリを完成させるまでの大変さも、実際に試して知っています。
だからこそ、AIを使えば何ができそうか、私にも作れるのではないか、と考えることができたのだと思います。
でも、ここで気になることがあります。
まだ経験がない人の場合、AIを使えば何ができるのか、これなら自分でも作れるのではないか、という発想自体が浮かばないこともあるのではないでしょうか。
論考のタイトルにある「見立てる力」とは、こういうことなのかもしれません。
では、AIを使いながら、どうやって経験を積んでいけばよいのでしょうか。
AIが出したものをそのまま受け取るだけでは、何が正しいのか、なぜうまくいったのかを理解できないこともあると思います。
ただ、経験のない人がAIを使うことで、経験を積む機会までなくなるとは限らないのではないでしょうか。
AIに助けてもらいながら実際に試し、うまくいかないところを調べたり、別の方法を考えたりする。そうしたことも、新しい経験につながる可能性があります。
もちろん、これだけで十分な知識や判断力が身につくとは言えません。私自身も、AIとともに学ぶための方法について、明確な答えを持っているわけではありません。
経験がある人は、その経験を生かして可能性を広げられる。そして、まだ経験のない人にも、AIと一緒に新しい経験を積んでいく道があるのかもしれません。
これまでの経験が、これからにつながっていく
スティーブ・ジョブズの有名なスピーチに「Connecting the Dots」という話があります。
そのときには何につながるのか分からなかった経験が、後になって別の経験と結びつき、意味を持つことがある、という話です。
AIを使いながら、これまでの経験が別のことにも生かせるのだと感じる場面が増えました。
Web制作やプログラミングに関わってきた経験があり、そこにAIが加わったことで、以前は難しいと思っていたツール制作などにも取り組めるようになりました。
ただ、振り返ってみると、それができたのは、つなげるもとになる経験がすでにあったからです。それがなければ、つなげるドットそのものを見つけられないのかもしれません。
AIを使うのが当たり前の世代の人たちは、これからどのようにドットをつなげる経験をしていくのか。
それは一人ひとりの問題というより、社会の課題なのかもしれません。
私自身も、今はまだ分からないことや、うまくできていないことがあります。
それでも、AIの助けを借りながら試していくことで、新しい経験が増えていきます。その経験が、また別のことにつながるかもしれません。
AIでできることが増えたからといって、何でもできるようになったわけではありませんし、これから取り組むことがすべて形になるとも限りません。
効率化できるところは効率化しながら、考えたり、試したり、作ったりする楽しさも大切にしたい。
AIによって何をしなくて済むようになるのかだけでなく、AIが加わったことで、これから何ができるようになるのか。
今まで作れなかったものを、どこまで形にできるのか。
そう考えると、これからが楽しみです。






