双子のデザイン
拝啓、スマイリーさん。
お元気ですか、デザネス(@dnwjp)です。
前の記事では、世の中のデザインに対する考え方が変わってきているのではないかというところから、世の中のデザインに対する考え方の変化について考え「デザインはデザイナーだけが考えるものではない」と述べました。
では、「デザイン」とは一体なんのことをいうのかについて考えてみたいと思います。
まずは、デザインの言葉の意味にはどのようなニュアンスが含まれているのかを確認するために「デザイン」についてを単純に辞書で調べるところからはじめてみたいと思います。## 「デザイン」という言葉
英語の「design」を辞書で調べてみました。
デザインには「動詞」と「名詞」の意味があります。
動詞としての「design」は
[動](他) 1 …を設計[立案]する;〈絵画などの〉下絵を描く, 〈意匠の〉図案を描く design a new model car 新型車を設計する design a dress ドレスをデザインする. 2 ((しばしば受身))…を(…に)予定する, 当てる((for, as ...));[V[名]to do]…が(…するよう)仕組む a book designed for children 子供向けの本 This booklet is designed to explain the use of the machine. この小冊子は機械の使い方を説明するためのものだ The book is designed as a college textbook. その本は大学用教科書として書かれている. 3 [III[名]/to do]…をもくろむ, 企てる;…を志す;[V[名]to do]…を(…させる)つもりである design a scheme 事業を企てる He designed to become rich. 金持ちになろうと志した. ━━(自) 1 図案を作る, デザイナーをする He designs for a famous dressmaking firm. 有名な洋裁店のデザイナーをしている. 2 (…の)設計をする, (…を)立案する;(芸術作品の)構図をとる((for ...)) design for the home 家の設計をする.
「設計する」という意味から「企てる」や「志す」などという意味まであります。
「〜をデザインする」という意味の自動詞についても「設計する」はもちろん「立案する」や「構図をとる」など、これもやはり「見た目」も含めた上で、もっと根本的な骨格の設計やプランニングについての意味があります。
では、名詞としての「design」はどうでしょうか。
━━[名] 1 (形式・構造などの)略図, 見取り図, 設計図;(絵などの)構図. 2 [U]意匠, 図案, デザイン;[C]模様;[U]意匠術, 図案法, 構想法 of his own design 彼が自ら設計した make designs on ivory 象牙に模様を施す. 3 計画, 企画, 腹案(⇒PLAN[類語]);悪だくみ, 陰謀 a design to oust one's political rivals 政敵を失脚させる陰謀. 4 [U][C]意向, 意図, 目的 by design or by accident 故意にか偶然に. 5 ((〜s))(…に対する)邪悪[利己的]な動機をもつ計画, 野心, 下心((against, on, upon ...)) He had designs on his wife's fortune. 妻の財産をねらっている. 6 美術作品. 7 仕組み, 構造. [ラテン語dēsignāre(dē-下へ+signāre記号で示す=記号で示し書く). △DESIGNATE]
名詞になってようやく意匠や模様という言葉が出てきます。
しかし、やはりここでも意向や意図、目的などのほか仕組みや構造というのが先に出てきています。
つまり、デザインには「意匠をほどこす」という意味よりも、「設計する」や「意図する」ということが原点となり、名詞として「意匠」や「ねらい」という意味のニュアンスが含まれているという風にも受け取ることができそうです。
実際のイメージとの乖離
実際のところ、「デザイン」という言葉を辞書で引いて意味をこじつけたところで、実際にはみなさんがイメージしたものとはすこし違うのではないでしょうか。
では、デザインという言葉をイメージするとどのようなことがイメージされるでしょうか。
iPhoneやMacのノートブックのようなデジタルガジェットや、±0のシンプルな加湿器、無印良品の質素でありながら存在感を感じさせるようなプロダクトだったり、FacebookやPinterest、Gunosy、SumallyなどのWebサイトなど、PathやStaccalなどのモバイルアプリをイメージされる人もいるかもしれません、もしかしたら金泊であしらわれた赤い漆塗りのおわんや水墨画の掛け軸などをイメージする方もいるかもしれません。
おそらく、これまでデザインを仕事としてきていない方ほとんどが、デザインという言葉には深くたくさんの意味があるにもかかわらず、イメージするものには「見た目」や「外観」についての印象を強く持ってしまっているのではないでしょうか。
「デザイン=見た目」ではない
今後、すべての人がデザインについて考える必要があるとデザネスが考えている ”デザインフル”な世界では、すべての人がデザインについて話す場合そのことが 見た目や 外観だけの話をしているのではないという共通認識を持たなければならないと考えています。
つまり、デザインの「意匠」以外の意味に注目していく必要があります。
そこでデザネスではデザインには、根本的に同じでありながら、違うものとして存在している2つのデザインあると考えます。
双子のデザイン
「企てる」デザイン
デザインには「企てる」という意味があります、つまり、事業家は事業を、映画監督は映画を、マーケッターは市場を読み解き方針や対策を企てるという意味にもなります。
そして、企てているプロダクトの先には必ずユーザーが存在しています。
そのユーザーを想定して 「企てる」デザイン これがデザネスが考えている双子のデザインのうちの一つです。
「企てる」デザインでは
- プロダクトの意図・目的を決定する
- 利用するユーザーを理解する
- 課題(問題)を定義する
- その解決のための施策を検討する
- プロトタイプを作成し検証する
目的を達成したいユーザーがいる、そのユーザーは何らかの問題や課題を抱えているため、その目的を達成するためにあるプロダクトを使用する。
その問題や課題を把握し、より適切にプロダクトをデザインすることがそのプロダクトの価値を高めると考えます。
また、プロダクトの意図や目的が決まっていないもの、言語化できていないものはプロダクトとして存在する価値を損ねてしまいます。
この時点でデザインプロセスはほぼ完了しているといっても過言ではありません。
「意匠」デザイン
UIのグラッフィックやアートワークなど、主にビジュアルで表現することを指します。(海外では「表現する仕事に集中する人」をデザイナーではなくアーティストと呼んだりするそうです)
「意匠」デザインでは
- アートワーク(外観のデザイン)
- 外観の実装
プロトタイピングとテストを繰り返し通過したものに対して、ふさわしい意匠を施します。デザインプロセスの残りと考えてしまうと非常に軽いような気がしますが、この2割の最後の0.3くらいのクオリティの詰めがプロダクトのすべてを決定する大事なポイントになると思います。
そして、最も重要なことは、意匠まですべて揃ったプロダクトが意図した結果を生み出せるどうかという最終的な検証を行います。
以上のようなことがデザネスの考えるデザインであると考えています。
見た目ではないデザインについて考えよう
デザネスで考えているデザインは、デザイナーだけのものではなく、経営からサービス、物理的なプロダクトを含めて、すべて事象に内在していることであると捉え、見た目だけのことではなく、本質的な目的を達成するための手段としてプランニングなどを含めた「企てる」デザインとその世界観を演出する「意匠」デザインの双子のデザインが存在していると考えます。
そして、どちらのデザインも表裏一体の存在として欠けてはならず、そのプロジェクトに関わる人すべてが共通の認識を持ち、使う人がどのような経験を得るのか、価値を得るのか、問題を解決するのかということを考え、構築し、提案する。
そのためにデザインが存在しているのではないかと、今はそのように考えています。